「spec espaceのクリエイティビティを支えるクラフトマンたち」〜チタンを操る職人〜

27 March 2020

「spec espaceのクリエイティビティを支えるクラフトマンたち」〜チタンを操る職人〜

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世界に誇るメガネの生産地・鯖江。
ここで作られる数多くのメガネの中で、もっとも柔軟性に富むスペックエスパス。
板状のβチタンから切り出し、蝶番を使わない、
これまでに見たことのないシンプルなデザインと強度を兼ね備えた、メガネの“進化系”。
その進化したメガネはマシンだけでは作り出せない、
多くの職人たちの手によって生み出されていました。

河和田にあるオプトデュオ本社より車を走らせること25分。
メガネ関連の工場をいくつも通り過ぎ、やってきたのは、株式会社アイビス高島。
未知のメガネを共に作り上げてきた高島功一さんを訪ねました。


株式会社アイビス高島 専務取締役 高島功一さん

株式会社アイビス高島はメガネの製造を一貫して行う総合メーカーです。
高島さんは、デザイナーが思い描くメガネをどう表現して世に送り出すか、
技術者や職人との架け橋となり、
通常200工程以上ある製造スケジュールを管理する、
いわば司令塔の役割を担っています。

スペックエスパスを作る工程は40ほどと少ないものの、
一般的なメガネとはまったくベツモノ。
ひとつひとつの工程に頭をひねり、どうしたらかたちになるか、
まったくマニュアルのないところから始まりました。

βチタンの特徴は温度変化に強く、軽量で頑丈。
スプリングバックと呼ばれるバネの跳ね返りが強い特殊な素材です。
それによりスペックエスパスの
“薄くて軽い、頑丈なのに柔軟性がある”
という魅力が生まれるのですが、
製造過程においては、そこが難所となりました。

たとえば、メガネを板から切り出すとき、
普通はプレス機を使いますが、スペックエスパスの場合、
長さと薄さゆえに2段階のレーザーカットが必要でした。
切り出した一枚の板を部分的にコンマ数ミリ単位で厚みを変え、
2度目のカットで最終切り出しを行います。

また、フロントから腕(テンプル)にかけての急カーブを美しい形状にするため、
バネの強さを計算し、3段階にわけて徐々にカーブをつけていくことになりました。

その他、切り出したときに出る金属の突起を研磨する際には、
テンプル加工の技術を応用するなど、
いくつもの場面で職人の技術や機械を駆使して、
試行錯誤を繰り返しながら開発が進んでいきました。


マシニングセンターと呼ばれる切削機。X軸・Y軸に加え、Z軸を用いて縦横無尽に動く。メガネごとにプログラムを組むプログラマーと機械を動かす専任の技術者が必要。

こうしていくつもの工程を経て、仕上げは人の手と目で行います。
調子取りと呼ばれる最後の工程です。
設計書を見ながら、正面のバランス、左右均等になっているか、
横から見たときのイメージなどをチェック。
ここで印象が決まってしまうので、2人の手と目で確認します。



手作業で繊細にバランスを調整していく。熟練の経験を要する。

高島さんに「良いメガネとは」何かを伺ってみました。
――「こだわりが見えるメガネですね」

こだわりというと?
――「デザイナーの想いといいますか。メガネという小さな世界の中でどんなことを表現しようと思っているのか、ということですね」

高島さんのメガネにかける想いは?
――「デザイナーさんのこだわりを忠実に表現し、いかに品質良く仕上げるか。それからもちろん価格と納期の面でも満足してもらえるように取り組んでいます。デザイナーさんの想いをかたちにしてお客さんにお届けする大事な役割を僕たちは担っているので!」


「どんな作業も簡単なんてことはなくて、日々勉強です」と語る研究熱心な高島さん。

初めて目にするであろう革新的なデザインは多くの人の目を惹きます。
それがないとブランドとしての進化はない、
そう語るオプトデュオデザイナーたちの挑戦に、
「これまでどんな難題も断ったことがない」という高島さんは欠かせない存在です。

株式会社アイビス高島
福井県鯖江市石田下町11-8
0778-51-2933

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