有限会社オプト.デュオ 代表取締役 山岸誉 インタビュー 第3回

20 September 2020

有限会社オプト.デュオ 代表取締役 山岸誉 インタビュー 第3回

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新しい生活様式という言葉が聞かれるようになって、私たちを取り巻く環境も急激に変化しています。山岸社長が見つめるメガネのあり方とは。
ー スペックエスパスは洗練されたイメージが確立していますが、ご自身がメガネをデザインする上で一番大切にしていることは?
コンセプトと造形美です。しかし、ハウスブランドの全てがそうではありませんが、東京発のブランドと比べて、どうしても鯖江発ブランドが洗練されていなと思われている節があります。欧米人から見た日本人のイメージも野暮ったいとか内向的だと捉えられることもある。我々のブランドも少なからず鯖江製を武器にしていますが、そういうネガティブイメージを打破していきたいというのは常にあります。
ー デザイナーであると同時に経営者でもありますが、2つの役割をどのように両立されていますか?
メガネ業界は社長をしながらデザイナーをしている人は多いですよ。僕は昔は自分が作りたいものを作ってきたんですが、従業員を抱えるようになってデザイナーというよりは、常に一歩引いてデザインディレクターという立場で物事を見るように意識はしています。
ー コロナ禍で先の見えない状況が続きますが、メガネ業界への影響は?
最近は海外OEMを手がける工場の稼働が減って、週休4日も出始めているという厳しい声も聞きます(取材当時)。また新しく鯖江にイタリア資本の大きい工場ができるので、熟練工が移籍するのではないかという懸念もありますが、それ以上に、作り手の高齢化とかもあって、我々が考えたものを一緒に作ってくれる工場が減ってしまうのは悲しいです。
ー 今後、消費者のニーズはどのように変化していくのでしょうか?
これからのメガネは、ざっくりいうとファッション性を重視するか、はたまた機能性を重視するか、というところになってくると思います。飽和状態でもあるファッションアクセサリーとしてのメガネが、果たして急成長するかというと難しいのかもしれない。一方、機能面に特化したメガネは、ステイホームやテレワークが当たり前の時代になって、ますます需要が高まっていると感じています。実際にスペックエスパスはマスクとの相性も良く、着衣の上からも装着しやすいと言ってくださる医療従事者の声も聞かれますね。それに加えて近年増えている3プライスショップは、低価格でジャンルを問わず品揃えがあり、鯖江製のメガネを扱うところも登場してきました。そこは我々にとっても、生き残れるかという問題にも繋がるんですけど。
ー これからの世界に通用するメガネとは?
メガネに対する価値観はそれぞれ違うと思いますが「ストレスなくかけられて、ちゃんと見える」ことです。一見とてもシンプルなようですが、多様化するプロモーションに消費者が踊らされてしまい、実は当たり前のことができていない製品も多いように感じます。僕はどちらかというと製造の方にベクトルが向いているので、僕たちが良いと考えているものを作ることを一番に考えたいんです。そうすると本当にやりがいを感じ、仕事が面白くてたまらなくなります。これからも良いメガネを作って、かけてもらう人に喜んでもらえるメガネづくりを目指してしていきたいです。
ー スペックエスパスの今後の展開について教えてください。
今のスタイルを昇華していきたいですね。意匠的なところでいうと、クラシックスタイルやモダンアートなど、様々なスタイルと融合すること、機能面ではレンズの性能や光学的な部分をより生かしたデザインに挑戦していきたいです。現在はアジア中心で販売してますが、ヨーロッパ市場への展開や、チャンスがあれば医療業界やスポーツ界で活躍されている方とも接点を持って、ブランドの可能性を広げていきたいです。スニーカーを例に挙げると、有名なナイキとかアディダスのようなブランドネームはすぐに思い浮かべることができますが、その点メガネはどうでしょうか。まだまだ知られていないからこそ、海外で戦える市場や土台ができたときに、我々のブランドもやっとスタートできる。そしていつかスペックエスペスのような近未来デザインが、世界に受け入れられる日が来るんじゃないかなと思っています。

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