レンズのお話。第1回「スマホ需要と遠近両用レンズ」

18 May 2023

レンズのお話。第1回「スマホ需要と遠近両用レンズ」

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メガネの魅力の一つに、コンタクトレンズによる不快感から目を解放してくれることがあります。また、年齢を重ねるにつれて目が疲れやすくなり、簡単につけ外しができるメガネが好まれます。特に、ここ十数年で遠近両用といわれるレンズは随分と進化しました。遠近両用の中でも中近両用、近々両用、アシストレンズ(サポートレンズ)というものがメガネ業界でも度々話題に上ります。

今回は、『マトイニコメ』の店長の佐々木さんに、レンズに焦点を当ててお話をうかがいました。どんなメガネにしようか迷っている方の参考になれば幸いです。

来店するお客様には「何が見たいのか」を確認する

佐々木さんは、お客様が普段どんな生活を送り、具体的に「何が見たいのか」を細かくヒアリングすることにしています。まずは、その人の条件よって違う視距離を探るためです。ひと昔前は「メガネを買えばオッケー」だった視力矯正も、今は複雑でそれほど簡単ではなくなりました。

 

ー「お客様に合わせたメガネを作るために、元々は何が見えていて、新しくメガネを作って何を解決したいのかを把握した上で、メガネを作る必要があります」

 

普段からパソコンを使う人なら目とパソコンの距離に合わせたメガネ、運転する人ならば運転に必要な距離に合わせたメガネが不可欠です。物が見えづらくなってきたら、物理的に見たい距離に合わせたレンズに変えることが、目の不都合を解消する近道なのです。

 

ー「どこが快適でどこが不便なのかがわかれば、たいていは解決できます。特にパソコン作業で困っているのであれば、話を聞いてくれるメガネ屋さんに相談するのがいいと思います」

 

ところで、私たちの生活に欠かせないパソコンやスマートフォンの普及は、メガネにどのような影響を与えたのでしょうか。

 

ー「おおげさに言えば、人の歴史の中で50~20センチ先を2~3時間も見ていることはなかった。30年ぐらい前は、車の運転ができることと新聞が読めること、この2つを両立させることが遠近両用メガネの役割だったはずです。しかし、生活様式が変化して人が見たい(求める)距離がどんどん増えてきました。パソコンなら50センチ先、タブレットなら30センチ先、スマートフォンなら20センチ先と、様々な距離で見えることが必要な時代です」

 

目の病気に関わることは眼科への受診が必要ですが、目のピントが合いづらいと感じたら、細かいアドバイスができるメガネ屋さんに行くのがおすすめ。例えば、そのメガネが運転や映画鑑賞には好都合で、近距離が不向きな設定がなされているなど、ズレの原因は人によって様々に起こるためです。

 

左:1980年代に流行したサンプラチナ製眼鏡 右:スペック エスパス

 
様々な遠近両用レンズ
 

「遠近両用」と聞くと、いまだに老眼鏡のイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、最近の遠近両用レンズは、いわゆるレンズに境目がないレンズ(累進レンズ)が主流となっています。これは視線を動かすだけで度数を調節できるので、1本で日常生活のほとんどを補ってくれる便利なメガネです。老眼鏡(=単焦点)がピントの合う距離が1か所であるのに対して、遠近両用(=累進レンズ)はピントの合う距離が複数個所あるレンズのこと。佐々木さんのお店では、「『駅の案内板とスマホ』や『書類とモニター』など見たいものが多岐にわたる場合は、累進レンズで見づらさを解決していきましょう」とご案内しています。

(人によっては単焦点レンズのほうが活躍する場面や中近両用、近々両用などおすすめする場合があるため、たくさんヒアリングをしています)

 

さらに累進レンズの中には中近両用、近々両用、アシストレンズ(サポートレンズ)などがありますが、特にアシストレンズ(サポートレンズ)は若い人の注目を集めています。

ー「サポートやアシストは簡単に言えば遠近両用の親戚みたいなもの。約15年前から商品化され、境目のない遠近両用レンズを若年層用にアレンジしたものです。20代や30代でも、日常生活で目が疲れやすい人に積極的に使ってもらいたいですね」と佐々木さん。

 

一般的な遠近両用とアシストレンズ(サポートレンズ)の違いは?

ー「メガネで遠くと近くの両方を見るにはコツが必要です。なるべく慣れやすいようにレンズをチューニングして、ハードルを下げたものがアシストレンズやサポートレンズになります」

 

遠近両用に抵抗感がある人には?

―「スポーツや映画をスマートフォンで見る人は、近距離を長時間にわたって見ることになるので、目には負担となります。皆さんには、見なきゃならない物が向こうから近づいてきちゃったから、メガネを変えるしかしょうがないですよ、と伝えています。作業距離に合わせた単焦点レンズをご紹介し、メガネを複数所持することを提案する場合もあります」

 

近年、デバイスの普及によって進化した遠近両用レンズ。

累進レンズに興味を持った方は、一度テストレンズを試してみてはいかがでしょうか。正しく選べば、メガネは生活を快適にしてくれる道具です。

 

 

『マトイニコメ』店長 佐々木 洸平さん

『マトイ』は東京都下北沢に、『マトイニコメ』は横浜市日吉に店舗があるメガネ屋さん。おしゃれな店内でユニークなスタッフさんが出迎えてくれます。店長の佐々木さんはメガネ販売歴10年。メガネのことなら何でもわかりやすく教えてくれます。

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